2017年1月25日水曜日

writer with no face:テクニカルライターという職業

皆さんは、「テクニカルライター」という職業をご存知だろうか。

私はもうかれこれ十数年、テクニカルライターとして働いている。
得意分野は情報機器やソフトウェア。

と言っても、IT系ウェブサイトに、最新IT事情に関するカッコイイコラムを書いている訳ではない。YouTubeなどでイケてる横文字を駆使しながら「ろくろ」を回しているわけでもない。
世間一般の皆様は「ライター」と聞くと、そのような華々しい方の「ライター」を想像するのではないだろうか。

私が作っているのは、製品の取扱説明書。いわゆる「取説屋」だ。
毎日毎日、膨大な仕様書や実機とにらめっこして神経をすり減らす、どちらかというと地味な仕事だ。

しかも発売前の製品を扱っているから、自分が今何について書いているかなんて、家族にすら話せない。・・・機密保持契約。

先日、LancersやCrowdworksなどのクラウドソーシングサイトにプロフィールを登録していて、はたと思った。
「あ、テクニカルライターって、ポートフォリオってねえな」

ウェブサイトのコラムなら、「この記事、私が書きました」とURLを貼ることができる。
取説ではそうはいかない。製品を買ってもらうしかない。
それに取説では、「既存の文章にいかに合わせて書くか」が大事なので、「自分が書きました」とアピールできない。

・・・そもそも取説は、製品のメモリやストレージ、あるいはソフトウェアと同じ「部品」の一部なのだ。「部品」が個性を主張しちゃいけない。

他の「部品」と同様、厳しい品質チェックを受ける。
不具合があれば、厳しく追及される。発生した経緯を、時には数年前にまでさかのぼってトレースしなければならないこともある。

それでいて、「わかりやすさ」という、とても曖昧な要求を満たさねばならない。

この仕事を「ライター」と呼んでいいのかどうか、たまに悩むこともある。
「ゴーストライター」とは、ちょっと違うか。でも近いところがあるかも。

・・・別にオチはない。ありません。

ただ、ふと、この「テクニカルライター」という職業、
限りなく「物書き」の末席に近い職業、
おそらく理解されることも評価されることも少ないであろうこの職業を、
私はこれからも誇りを持って続けていきたいと、

・・・会計ソフトの難解なユーザーインターフェイスに心折られぬために、
必死に自分自身に言い聞かせていたのである。

みなさま、おやすみなさい。